「息子の部屋」 06/27
2001年の伊映画。カンヌ、ベルリン映画祭で最高賞受賞。
監督、原案、主演はナンニ・モレッティ。
【ストーリー】
イタリアの小さな港町。精神分析医のジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は、
妻のパオラ(ラウラ・モランテ)、娘のイレーネ(ジャスミン・トリンカ)、
息子のアンドレア(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)と暮らしていた。
思いやりとユーモアにあふれた、暖かな家庭。
少しばかり退屈ではあるが、平穏な毎日。
しかし、ある日、息子のアンドレアが事故で命を落としてしまう。
**********************************************************
【感想】
シンプルなストーリーをカメラが静かに追いかけ、
見る者の心に様々な思いを呼び起こす。
物語は「ある日突然息子が死んだ。」というシンプルなもの。
残された家族が抱える喪失感を描いているわけだが、
こういう抽象的な話って、実際映像にしようとすると難しいのではないか。
やり過ぎるとわざとらしいし、お涙頂戴だと白けるし。
この映画はそのさじ加減がほどよくて、
地味で静かなんだけど見た後にジワリと残りとても好きな作品だ。
とくに「家族」という、国も文化も超えた普遍的なテーマは理解しやすく、
ストレートに心に入ってきて、私は全編ウルウルしながら、
時に涙をぬぐい、鼻をかみながら(忙しい!劇場でなくてよかった=3)見た。
十代の頃はヨーロッパの映画をあまた見て、
画面に映し出されるすべての物に憧れた。
風景、建物、インテリア、ファッション、言葉に至るまで。
特に日本とは全く違う街並みには随分と憧れ、
いつか行ってみたい!と強く思ったものだ。
そのせいか、私は初めての海外旅行の地に欧州(伊を含む)を選んでいる。
この映画はイタリアの小さな港町が舞台となっているが、
当時はこういう映画の風景を見ながら憧れたものだなぁ、と
若い頃の気持ちがよみがえり、ノスタルジックな気持ちになった。
冒頭、港から街中までジョギングする主人公をカメラが追うのだが、
真っ赤な貨物船とその向こう側の斜面にギリシャ風の建物がゆっくり映し出される。
貨物船のくすんだ赤色と海の青のコントラストが美しく、
異国情緒たっぷりで一気に魅了される。
その赤と青の色使いは息子の服など全編の所々で使われている。
父親のジョバンニは精神分析医で、
色んな患者が悩みを打ち明けるシーンが繰り返される。
どうでもいいことをつらつらと悩み、打ち明ける患者。
ジョバンニはとても冷静で、内心またか...と思えど、
キレることなく淡々と患者の話に耳を傾ける。
でもそれは、自分と患者の間には線が引いてあって、
患者は向こう側の人間だと思っているからできること。
後半、息子が死んでからは、そのラインが消滅して、
自分も向こう側の、患者と同じ悩みを抱える人間になってしまう。
いいな、と思ったシーンがたくさんある。
まず始まってすぐ、母親と娘が食卓で部活の話をしているシーンがある。
バスケの音がどうだとか、テニスの音が好きだとか、
たわいもない話なんだけど、家族の団欒って感じで、
後半に行けばいくほどあのシーンが活きてくる。
それから娘と母親が買い物に行って服を試着するシーンで
色で迷う娘に「両方買えば」と言う母親。
娘は試着室に戻って号泣する。
兄(弟?)の死後、両親が自分に気を使うようになったのがつらくて。
また、父親は息子の生きていた時間軸まで巻き戻したいと、
オーディオを何回も何回も巻き戻す。
心の機微はセリフにするとチープになるが、
上手く描いていて、涙が止まらなかった。
ラスト、息子のガールフレンドを送っているうちに、
フランスとの国境まで車を走らせてしまうジョバンニ。
「ここはどこ?今日は大事な試合があるのよ!」という娘の言葉に、
ふと我に返る。一体何をしているんだ。馬鹿らしくなって大笑いする。
3人家族になってはじめて家族に笑顔が戻る瞬間だ。
息子は死んだ。でも残された家族は生きている。
家族はそれぞれ喪失感を抱えながらも、自分たちの人生を一歩踏み出す。
早朝の海岸で、家族3人がそれぞれ赴くままに歩き出すのを
遠くからカメラが見つめ物語は終わる。
全編を通して音楽の使い方もとてもよかった。
こういった作風はアメリカ人には真似できないだろう。良作。
★★★★☆ (4.8点)
△0.2点は息子の存在感が薄く、ブサメン君(ごめん!)だったので。
(でもこの少年を起用したのもおそらく監督の計算内なのでしょうきっと。)
監督、原案、主演はナンニ・モレッティ。
【ストーリー】
イタリアの小さな港町。精神分析医のジョバンニ(ナンニ・モレッティ)は、
妻のパオラ(ラウラ・モランテ)、娘のイレーネ(ジャスミン・トリンカ)、
息子のアンドレア(ジュゼッペ・サンフェリーチェ)と暮らしていた。
思いやりとユーモアにあふれた、暖かな家庭。
少しばかり退屈ではあるが、平穏な毎日。
しかし、ある日、息子のアンドレアが事故で命を落としてしまう。
**********************************************************
【感想】
シンプルなストーリーをカメラが静かに追いかけ、
見る者の心に様々な思いを呼び起こす。
物語は「ある日突然息子が死んだ。」というシンプルなもの。
残された家族が抱える喪失感を描いているわけだが、
こういう抽象的な話って、実際映像にしようとすると難しいのではないか。
やり過ぎるとわざとらしいし、お涙頂戴だと白けるし。
この映画はそのさじ加減がほどよくて、
地味で静かなんだけど見た後にジワリと残りとても好きな作品だ。
とくに「家族」という、国も文化も超えた普遍的なテーマは理解しやすく、
ストレートに心に入ってきて、私は全編ウルウルしながら、
時に涙をぬぐい、鼻をかみながら(忙しい!劇場でなくてよかった=3)見た。
十代の頃はヨーロッパの映画をあまた見て、
画面に映し出されるすべての物に憧れた。
風景、建物、インテリア、ファッション、言葉に至るまで。
特に日本とは全く違う街並みには随分と憧れ、
いつか行ってみたい!と強く思ったものだ。
そのせいか、私は初めての海外旅行の地に欧州(伊を含む)を選んでいる。
この映画はイタリアの小さな港町が舞台となっているが、
当時はこういう映画の風景を見ながら憧れたものだなぁ、と
若い頃の気持ちがよみがえり、ノスタルジックな気持ちになった。
冒頭、港から街中までジョギングする主人公をカメラが追うのだが、
真っ赤な貨物船とその向こう側の斜面にギリシャ風の建物がゆっくり映し出される。
貨物船のくすんだ赤色と海の青のコントラストが美しく、
異国情緒たっぷりで一気に魅了される。
その赤と青の色使いは息子の服など全編の所々で使われている。
父親のジョバンニは精神分析医で、
色んな患者が悩みを打ち明けるシーンが繰り返される。
どうでもいいことをつらつらと悩み、打ち明ける患者。
ジョバンニはとても冷静で、内心またか...と思えど、
キレることなく淡々と患者の話に耳を傾ける。
でもそれは、自分と患者の間には線が引いてあって、
患者は向こう側の人間だと思っているからできること。
後半、息子が死んでからは、そのラインが消滅して、
自分も向こう側の、患者と同じ悩みを抱える人間になってしまう。
いいな、と思ったシーンがたくさんある。
まず始まってすぐ、母親と娘が食卓で部活の話をしているシーンがある。
バスケの音がどうだとか、テニスの音が好きだとか、
たわいもない話なんだけど、家族の団欒って感じで、
後半に行けばいくほどあのシーンが活きてくる。
それから娘と母親が買い物に行って服を試着するシーンで
色で迷う娘に「両方買えば」と言う母親。
娘は試着室に戻って号泣する。
兄(弟?)の死後、両親が自分に気を使うようになったのがつらくて。
また、父親は息子の生きていた時間軸まで巻き戻したいと、
オーディオを何回も何回も巻き戻す。
心の機微はセリフにするとチープになるが、
上手く描いていて、涙が止まらなかった。
ラスト、息子のガールフレンドを送っているうちに、
フランスとの国境まで車を走らせてしまうジョバンニ。
「ここはどこ?今日は大事な試合があるのよ!」という娘の言葉に、
ふと我に返る。一体何をしているんだ。馬鹿らしくなって大笑いする。
3人家族になってはじめて家族に笑顔が戻る瞬間だ。
息子は死んだ。でも残された家族は生きている。
家族はそれぞれ喪失感を抱えながらも、自分たちの人生を一歩踏み出す。
早朝の海岸で、家族3人がそれぞれ赴くままに歩き出すのを
遠くからカメラが見つめ物語は終わる。
全編を通して音楽の使い方もとてもよかった。
こういった作風はアメリカ人には真似できないだろう。良作。
★★★★☆ (4.8点)
△0.2点は息子の存在感が薄く、ブサメン君(ごめん!)だったので。
(でもこの少年を起用したのもおそらく監督の計算内なのでしょうきっと。)


